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過労死と教育

今となってはもう昔のことだが、塾にゆうきくん(仮名)という子がいた。彼は小学六年生で、中学受験をするために、勉強一筋の毎日を強いられていた。

ゆうきくんはとてもおとなしい子で、蚊のなくような声である。たまに私に好きなゲームについて教えてくれるがわずかしか聞き取れない。そんなゆうきくんがある日、担当講師にはっきりとした声で「どうして勉強するの」と質問をした。講師からは「お母さんのため」、「勉強しないとどこも雇ってくれない、生きていけないから」などと説明していた。ゆうきくんは納得したのだろうか。その質問は、きっと大変勇気のいることだったに違いない。

私はゆうきくんに、勉強の楽しさを教えてあげるべきだった。人生一生涯勉強であり終りなんてないこと、だから私も先生とは名ばかりであり未熟であって勉強途中であること、ゆうきくんと一緒に勉強できてとても楽しいこと。でも、受験生に勉強を楽しむ余裕なんてないのだ。だから、私は心の中でゆうきくん、ごめん。と呟いた。

受験直前の冬期講習のことだった。「死ぬ気で勉強しろよ。」ゆうきくんの担当講師の熱弁が聞こえた。

ゆうきくんは、今頃はもう高校生だろうか。社会人になったら、どんな社会人になるんだろう。もう二度と勉強なんてしたくないと思うのだろうか。家族のため、生きていくため、疑問を持たずに死ぬ気で働き続けるだろうか。もし、そうなってしまったら、塾に、私に、どのくらいの責任があるのだろうか。